格安航空会社(ローコストキャリア、LCC)の台頭により、日本の上空で繰り広げられる競争は熾烈なものとなっている。筆者を含む、航空機利用経験の少ない人にとっては、これまで航空会社といえば全日本空輸<9202>(ANA)か日本航空<9201>(JAL)と相場が決まっていたが、LCCの参入により様々な航空会社を選ぶことができようになった。
しかし全日本空輸と日本航空のライバルは、そうしたLCCだけではない。「かつて航空会社といえば全日本空輸か日本航空と相場が決まっていた」ことからもわかる通り、その2社同士のライバル関係も依然として続いている。
そうしたなか、全日本空輸が8日に5月の旅客輸送実績を発表。それによると、実際の利用実績を表す指標である「有償旅客キロ」が、国際線において初めて日本航空を上回ったことがわかった。こうして単月で日本航空を上回るのは、1986年の国際定期便の就航以来、初めてのことである。
「有償旅客キロ」は運賃を支払って搭乗した有償旅客数に対して、飛行距離をかけ合わせて算出される。2社の5月の実績を比較してみると、全日本空輸は前年同月比25.4%アップの29億5294万旅客キロで、日本航空は前年同月比7.8%アップの29億1163万旅客キロという結果であり、全日本空輸がわずかに上回った。
また、運航する旅客輸送力の規模を表す「有効座席キロ」でも日本航空を上回っており、4月に続いてこれで2ヶ月連続。「有効座席キロ」は総座席数と飛行距離をかけ合わせて算出される。全日本空輸が前年同月比26.3%アップの41億5922万座席キロであったのに対し、日本航空は前年同月比4.5%アップの39億6905万座席キロと、やはり日本航空を上回った。また全日本空輸は2016年度までに、座席キロを13年度比で45%アップさせるという目標を掲げている。
10年の経営破たん以来、日本航空は採算の取れない路線の撤退や縮小を実施しており、13年度の航空規模や旅客輸送量はピークの00年度と比較すると、半分以下となっている。それに対して全日本空輸は、04年度に初となる国際線での黒字を計上して以来、羽田空港の国際化などその運航規模の拡大に努めている。今回の結果は、そうした2社の現状がクリアに表れる形となった。