ジカ熱拡大、WHO緊急宣言で渡航情報「レベル1」が増加 / 2016年2月 4日

 中南米などで流行している感染症のジカ熱について、外務省は現在「海外安全ホームページ」での迅速な情報提供に努めている。同省は今年の1月15日には「中南米地域におけるジカ熱及びデング熱の発生」をリリースし、「感染症危険情報」として各国での発生状況や注意事項などについて説明。また、2月1日に世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を発出したことを受け、3日には、これまで危険情報を発出していなかった太平洋のサモア、大西洋のカーボヴェルデについても、感染症危険情報と連動する形でレベル1の注意喚起を発出した。同省によればレベル1の対象国は、今後も増加する見通し。

 妊婦が感染すると胎児が小頭症などを発症するリスクがあるとされるジカ熱は、ジカウイルスを蚊などが媒介することでおこる感染症。主な症状としては軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが挙げられる。有効なワクチンや治療法はなく、蚊に刺されることを防ぐことが唯一の予防方法。なお、2014年にアフリカ西部で流行したエボラ出血熱などとは違って、致死率は高くないことから、同省では「危険情報を発出したとしても当面はレベル1にとどまる」との見方を示している。

 ジカウイルスは1940年代からその存在を知られており、これまでにも熱帯を中心に世界の各地で感染が確認されてきた。しかし昨年5月から拡大が続くブラジルでは、政府が妊婦のジカウイルス感染と胎児の小頭症に関連が見られると発表。今年1月に入ってからは米国疾病予防管理センターや欧州疾病対策センターも、ジカ熱と小頭症との関連について詳細な調査結果が得られるまでは、流行国への妊婦の渡航を控えるよう警告している。

 その後、2月1日にはWHOが緊急委員会を開催し「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言。日本の厚生労働省も翌2日には、届出基準などの検討や、自治体や検疫所における検査体制の整備、医療機関向けの診療ガイドラインの改訂などを進める方針を示している。

 外務省によれば、サモアやカーボヴェルデにおけるジカ熱は中南米での拡大とは別に発生したもので、旅行者が持ち込んだものではないという。一方、ポルトガルや英国などのヨーロッパ諸国では中南米などで感染し帰国後に発症した症例が報告されており、今後これらの国内における感染の拡大が報告された場合には、サモアやカーボヴェルデと同様に、危険情報のレベルの引き上げがおこなわれる可能性がある。米国では性交渉が原因と考えられる感染事例が報告されているが、同事例については「詳細を確認した上で対応を検討する」とした。

 なお、現時点で日本人の感染や、感染した外国人旅行者の訪日などは確認されていない。日本に常在する蚊ではヒトスジシマカが媒介する可能性があるものの、現在は冬季であることから、国外からのウイルスの流入があったとしても、急激な拡大の可能性は低いと見られている。なお、これまでに日本国内で感染が拡大した症例はないが、海外で感染して日本国内で発症した症例は、13年以降に3例が確認されている。いずれも14年の症例で、仏領ポリネシアのボラボラ島を訪れた2名、タイのサムイ島を訪れた1名が、帰国後にジカ熱と診断された。