ベルギーのブリュッセル空港と地下鉄駅で3月22日に発生した複数の爆発を受けて、旅行会社や航空会社などはそれぞれ対応を開始した。旅行会社は直近のツアー催行を中止し、成田/ブリュッセル便を運航している全日空は3月中の運航便を全休する。そのほか政府も新たな情報の収集にあわせて、情報提供や通達の発出を実施。ベルギーや隣国のオランダでは観光シーズンが始まり、例年では夏の予約も動き出す時期を前にしたテロ事件に対する、各社の対応をまとめた。
大手旅行会社については、ジェイティービー(JTB)は22日にブリュッセル滞在中またはブリュッセル入りするパッケージツアーはなく、23日と24日に出発してブリュッセル入りするツアーは催行を中止し、全額を返金する。両日であわせて約50名の参加者に影響が出たという。28日以降に出発するツアーについては、24日までに催行の可否を決定。今後については、情報収集の上で催行やキャンセル対応などについて決定する。
近畿日本ツーリストおよび近畿日本ツーリスト個人旅行は、22日にブリュッセル滞在中またはブリュッセル入りするツアー参加者などがいなかったことを確認。ただし、数日以内にブリュッセル入りする予定の団体があるため、他都市への振り替えやツアーの切り上げなどを検討する。そのほかには3月中に催行を予定するツアーはなく、4月以降については現地の状況などを判断して催行やキャンセル対応などを検討する。23日夕方の時点で問い合わせやキャンセルは少ないという。
クラブツーリズムは、22日には添乗員付きツアーの参加者10名がブリュッセルに滞在していたが、無事を確認。23日から31日までに出発するツアーについては、すでに中止を決定しており、旅行代金を返金する。なお、すでに欧州へ出発済みで、24日または25日に現地入りする予定だった約50名については、ルートの変更やツアーの切り上げなどを検討。4月以降のツアーの催行やキャンセル対応については、今後の状況を勘案しながら検討を進める。
エイチ・アイ・エス(HIS)は、事件発生時にブリュッセルに滞在していたツアー参加者の安全を確認。23日発のツアーは不催行とし、24日以降のツアー催行については、空港の復旧状況などを確認した上で対応を検討するという。24日以降のキャンセル対応については、現時点では通常通りキャンセル料を収受する方針だが、状況の変化により臨機応変に対応する可能性が考えられるという。
日本旅行については、22日にブリュッセルに滞在中または現地入りした旅行者はおらず、その後も3月中はブリュッセルへのツアーは予定していない。4月以降のツアーの催行については、キャンセル料の取り扱いなども含めて検討を進める。
阪急交通社は22日にブリュッセルに滞在していた旅行者全員の無事を確認。すでに欧州入りし、終盤にベルギー入りする周遊ツアーについては予定通り催行しているという。23日と24日に日本から直接ベルギー入りするツアーについてはキャンセルし、旅行代金を全額返還。25日以降に出発するツアーについては今後の状況を見て検討し、現地の交通機関などが機能していない場合には解除権を与える見通し。キャンセルなどに関する問いあわせの電話は「それほど多くない」という。
ジャルパックは、28日に出発するベルギーを含むツアーについては、現時点では通常どおり催行する予定。そのほか4月と5月には約30本のツアーを予定しているが、催行の可否については現地からの情報などを勘案しながら検討する。今回の事件の影響については「問い合わせは増えると思う。ある程度の影響は避けられない」との見方を示した。
ANAセールスについては、3月にブリュッセルへ出発する旅行の取り止めを申し出た旅行者にはキャンセル料を課さない考えで、既に一部がキャンセルを申し出たという。4月以降の旅行のキャンセルについては通常通りの対応とする予定。なお、4月以降の出発分についてはすでに問い合わせが約20件あり、3分の1程度がキャンセルに。いずれもキャンセル料が発生する期間以前だったという。
ミキ・ツーリストはブリュッセル支店で情報収集に努め、旅行会社に対して随時最新情報を提供しているところ。ツアーの催行可否などについては各旅行会社に判断を委ねている。
ツムラーレによれば、現地時間22日15時の時点でブリュッセルの主要な観光地は閉まっており、ユーロスターなどの国際電車も一部を除き運行を見合わせている。同市については22日には外出禁止令が出たものの、23日は通常通りに戻り学校なども再開。そのほか隣国では、パリのオルリー空港やシャルル・ド・ゴール空港が厳戒態勢に入りセキュリティを強化したという。
日本航空(JL)は、23日の時点では特段の対応はおこなっておらず、状況を注視しているという。同社は今月に入り成田/パリ線の運航を再開。4月と5月の予約状況は回復傾向にあるが、今回の事件がどのような影響を与えるかについては不透明との見方を示した。
全日空(NH)は22日のブリュッセル発成田行き便と、23日の成田/ブリュッセル線の往復2便の計3便を欠航とし、約400名に影響が出た。24日から31日までの計16便についても全休する計画で、同期間中には約1700名に影響が出る見込み。運休便の予約者には、手数料を徴収せずに払い戻しや予約変更などに応じる。4月1日以降の運航については、状況を見極めながら可否を検討するという。
なお、22日の成田発ブリュッセル行き便については、ブリュッセル空港が業務を停止したためデュッセルドルフに着陸。到着後の乗客に対しては現地係員が移動などをサポートしたという。
NHは23日から25日にかけて、デュッセルドルフ発成田行きの臨時便を3便運航する予定。デュッセルドルフを18時00分に出発し、成田には翌日の13時30分に到着する。23日については、運休したブリュッセル発成田行き便の乗客と、22日にデュッセルドルフで降機した乗客が対象となるが、24日と25日については消費者向けに幅広く販売するという。ブリュッセルからデュッセルドルフまでの移動については、乗客が自費でおこなう必要がある。
今回の事件を受けて日本政府は在ベルギー日本大使館に現地対策本部を設置し、邦人の安否確認と安全確保に向けた対応に当たっているところ。事件発生後は数度にわたり在留邦人や「たびレジ」登録済みの短期渡航者にメールを発出し、注意喚起をおこなっている。
現地からの報道によれば、今回の事件で少なくとも34人が死亡、198人が負傷したとされ、外務省によればそのうち日本人は男性の重軽傷者が各1名。ベルギー政府が被害者数の最終発表をおこなうまでは、増加する可能性があるという。一部のメディアは2名はともに現地在住者と報じているが、同省は非公表としている。
外務省は、今回の事件が発生する前の3月16日には「海外安全ホームページ」でテロの脅威に関する情報を発出をしていたが、22日以降は数度にわたり注意喚起のための安全情報を更新。ベルギー政府が全土のテロ脅威度を最高レベルの4(非常に高く危険な状態)に引き上げたこと、イスラム教過激派組織のISILが犯行声明を発出したこと、犯人が逃亡中であることなどを伝えている。
そのほか、観光庁は23日に日本旅行業協会(JATA)などに宛てて事務連絡「ベルギーで発生した連続テロ事件を踏まえたテロ対策の徹底」を発出。会員会社に対して、日本人旅行者の安全確保に万全を期すよう周知を要請している。