北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射などを繰り返し、朝鮮半島情勢が不透明化するなか、外務省が韓国に注意喚起のための情報を発出したこと、一般向けの報道が加熱していることなどで、旅行業界の関係者は今後の動向や影響に神経を尖らせている。ただし関係各社への取材を進めたところ、現時点ではゴールデンウィーク期間も含めて、予約などに大きな影響はないことも明らかになってきた。各社の状況などについて紹介する。
本誌の取材に応じた旅行会社各社によれば、旅行のキャンセルや消費者からの問い合わせなどは、いずれも13日午後の時点ではほとんどなく、パッケージツアーも通常通り催行している。ジェイティービー(JTB)は「広報室ではツアーのキャンセルが相次いでいるという話は聞いていない」と回答。状況を引き続き注視するとともに、ツアーの申込者には外務省が発出したスポット情報を周知していることを説明した。
エイチ・アイ・エス(HIS)は「お客様からの問い合わせはゼロではないが、そもそも韓国への旅行者が多いので、大きな影響はない」とコメント。韓国の支店から街の様子などの情報を収集しているが、通常と変わりはないことから、関係者や消費者、メディアに向けては「冷静に状況を見ていただきたい」と述べた。あわせて、報道のエスカレートなどによる今後の風評被害の拡大に懸念を示した。
楽天は「楽天トラベル」の海外旅行ページの「お知らせ」の欄に、「韓国へ渡航されるお客様へ」と題したメッセージを掲載。外務省の海外安全ホームページへと誘導している。予約への影響などについては非公表とした。
航空会社については、取材に応えた全日空(NH)、日本航空(JL)、大韓航空(KE)、アシアナ航空(OZ)、エアプサン(BX)は、いずれも予約への影響はほとんどなく、状況を注視する考えを説明。中韓関係の悪化を受けて、期間限定で関空/大邱線の臨時便を運航するBXをはじめ、いずれも減便や運休は考えておらず、状況の変化にあわせて都度対応する考えを示した。
▽現時点で旅行や滞在を控える必要なし?官房長官
外務省は4月11日に「海外安全ホームページ」で、韓国を対象とする注意喚起のスポット情報を発出。「直ちに日本人の安全に影響がある状況ではなく、危険情報は出ていない」と前置きした上で、旅行者に対しては報道などから最新の情報を収集することなどを呼びかけている。あわせて、滞在が3ヶ月未満の旅行者には「たびレジ」への登録、3ヶ月以上の場合は在留届の提出を呼びかけている。
内閣官房長官の菅義偉氏は12日の会見で、外務省のスポット情報について言及。外務省と同様に、直ちに日本人の安全に影響がある状況にはないとの見方を示した上で「現時点で韓国への旅行や滞在を控える必要はない」と語った。韓国に滞在する日本人の安全確保については、米国や韓国と緊密に連絡を取り、高度の警戒と監視を続ける方針を示した。
韓国観光公社(KTO)は13日午前の時点で「観光への影響については現時点では把握できていないが、旅行者からの問い合わせなどはない」と回答。今後については「日本人の訪韓旅行は回復傾向にあるので、何事もないことを願っている」と述べるにとどめ、事態を注視する方針を示した。16年の訪韓日本人旅行者数は前年比25.0%増の229万7893人で、昨年6月から今年2月までは9ヶ月連続で増加を続けている。
観光庁には一般消費者から、予定している旅行のキャンセルを求める問い合わせが数件あったという。本誌の取材に対しては「韓国で何か有事が起きている訳ではないので、現時点で特段の対応は考えていない」と説明した。
そのほか、あるリスク管理に関するコンサルティング会社は「朝鮮半島の情勢は報道されているように緊張した状況にある。外務省の情報を参考に引き続き注視していく」とコメントした。ここ数日のうちに、顧客の企業から渡航の是非に関する質問が数件寄せられたという。