外務省は5月30日、世界保健機関(WHO)がこのほどインドをジカウイルス感染症の「カテゴリー2」に追加したことを受けて、注意喚起のためのスポット情報を発出した。同カテゴリーは「2015年以前にウイルス伝播を確認、または15年以降新たに感染事例が報告され、中断なく感染伝播が起きている地域」が対象で、インド保健家族福祉省は今月に入り、グジャラート州のアーメダバードで感染症例3例が報告されたことを発表している。
ジカウイルスについては、妊娠中に感染すると胎児に小頭症などの先天性障害が現れることがあるため、外務省は妊娠中または妊娠を予定している人には、流行地域への渡航を可能な限り控えることを呼びかけている。また、渡航者には各国の大使館や領事館のウェブサイトなどから最新情報を入手するとともに、防蚊対策を呼びかけている。
外務省によればWHOは、ジカウイルス感染症の伝播状況とその潜在性に応じて、世界の国と地域を4つのカテゴリーに分類。危険度の高いカテゴリー1と2の地域については、妊娠中の女性が渡航しないよう呼びかけている。WHOによる分類は以下の通り。
▽WHO、ジカウイルス感染症の危険度
●カテゴリー1:15年以降感染事例が報告され、現在も感染伝播が起きている地域【アフリカ】アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ 【中南米】アルゼンチン、アンティグア・バーブーダ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、グアテマラ、グレナダ、キューバ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、スリナム、セントルシア、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセントグレナディーン諸島、ドミニカ共和国、ドミニカ、トリニダード・トバゴ、ニカラグア、パナマ、バハマ、パラグアイ、バルバドス、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ、英領アンギラ、英領タークス・カイコス諸島、英領ケイマン諸島、英領バージン諸島、英領モントセラト、仏領グアドループ、仏領サン・マルタン、仏領ギアナ、仏領マルティニーク、蘭領アルバ、蘭領ボネール、蘭領キュラソー、蘭領シント・マールテン、蘭領シント・ユースタティウス島、蘭領サバ島、バージン諸島、米領プエルトリコ)【北米】米国フロリダ州の一部地域、米国テキサス州の一部地域【アジア】シンガポール、モルディブ【大洋州】サモア、ソロモン諸島、トンガ、パラオ、パプアニューギニア、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦
●カテゴリー2:15年以前にウイルス伝播を確認、または15年以降新たに感染事例が報告され、中断なく感染伝播が起きている地域【アフリカ】ウガンダ、ガボン、カメルーン、コートジボワール、セネガル、中央アフリカ、ナイジェリア、ブルキナファソ、ブルンジ【中南米】ハイチ、ブラジル 【アジア】インド、インドネシア、カンボジア、タイ、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ラオス
●カテゴリー3:感染伝播は途絶えているが、将来感染伝播が起こる可能性がある地域【中南米】仏領サン・バルテルミー島【大洋州】バヌアツ、チリ領イースター島、クック諸島、仏領ポリネシア、仏領ニューカレドニア、米領サモア
●カテゴリー4:媒介するネッタイシマカの生息が確認されているが、これまでに感染事例の報告がない地域【アフリカ】エジプト、エリトリア、エチオピア、ガーナ、ガンビア、ギニア、ケニア、コモロ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、赤道ギニア、セーシェル、ソマリア、タンザニア、チャド、トーゴ、ナミビア、ニジェール、ベナン、ボツワナ、モザンビーク、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ共和国、南スーダン、モーリシャス、リベリア、ルワンダ、仏領マヨット、仏領レユニオン【中南米】ウルグアイ 【中東】イエメン、オマーン、サウジアラビア【ヨーロッパ】ジョージア、トルコ、ロシア、ポルトガル領マデイラ 【アジア】スリランカ、中国、ネパール、パキスタン、東ティモール、ブータン、ブルネイ、ミャンマー【大洋州】オーストラリア、キリバス、オーストラリア領クリスマス諸島、ツバル、ナウル、ニウエ、ニュージーランド領トケラウ、米領グアム、米領北マリアナ諸島、仏領ウォリス・フツナ
外務省は5月29日、22日夜に英国・マンチェスター中心部のマンチェスター・アリーナで発生した爆発事件を受け、改めて注意喚起のためのスポット情報を発出した。事件は米国の人気歌手のアリアナ・グランデさんのコンサートの終了時に、会場の出口付近が爆破されたもので、現地当局によればこれまでに22名が死亡。報道によれば100名以上が負傷したとされている。同事件についてはイスラム教過激派組織のISILが犯行声明を発出し、さらなるテロを予告している。
英国政府は事件を受けて、テロ脅威レベルを5段階中で最も高いレベルの「critical」(危機的)に指定。その後、27日には2番めに高い「Severe」(深刻)に引き下げたが、外務省では「テロ攻撃が発生する可能性がいまだ極めて高いことを意味する」として、英国を訪問する旅行者には引き続き、最新の関連情報の入手に努め、テロの標的となりやすい場所などを極力避けること、「たびレジ」に登録することなどを呼びかけている。
外務省はそのほか、6月8日には同国で下院総選挙がおこなわれること、今月27日からラマダン月間に入っていること、ナイトクラブなどの閉鎖空間や、野外での大規模行事などに対するテロがネット上で呼びかけられていることも説明。「さらなるテロの発生が懸念される」として警戒を呼びかけている。
外務省は4月21日、5月8日から訪日中国人旅行者のビザの取得要件をさらに緩和すると発表した。「明日の日本を支える観光ビジョン」で定めている戦略的な緩和策の一環で、新たに「十分な経済力を有する者」への数次ビザ発給を開始するほか、「相当の高所得者」の数次ビザ取得要件の緩和などをおこなう。「十分な経済力」などの定義については、不正申請などを防ぐために引き続き公開しない方針。
緩和する要件は5つで、中国国内に居住する中国人の個人観光客については、これまで「十分な経済力を有する者」とその家族が数次ビザを取得する際には、初回の訪問時において沖縄県、岩手県、宮城県、福島県のいずれかで1泊することとしていたが、この要件を廃止。初回の訪問目的を観光にすることだけを条件とした。有効期間の3年間については変更せず、1回の滞在可能期間は30日以内とした。
「一定の経済力を有する者」とその家族に対しても、現在は初回の訪問時に沖縄または岩手県、宮城県、福島県のいずれかで1泊する場合に数次ビザを発給しているが、新たな対象地として青森県、秋田県、山形県を追加。あわせて、これまで義務付けていた過去3年以内の日本への渡航歴の要件を廃止する。なお、有効期限は3年、滞在可能期間は30日のままとする。
「相当の高所得者」とその家族に対しては、現行の有効期間5年、滞在可能期間90日の数次ビザについて、初回の訪問目的を観光に限定せず、商用や知人の訪問などでも良いとする。また、旅行会社を介さずに自ら航空券や宿泊施設などを手配することを認める。
また、クレジットカードのゴールドカードを所有する者については、個人観光1次ビザの申請手続きを簡素化。そのほか、中国国外に居住する中国人の個人観光客については、従来は1次ビザしか発給していなかったが、今後は中国国内に住む中国人と同じ要件で観光目的の数次ビザを発給する。
外務省はこのほど「海外安全ホームページ」において、欧州全域におけるテロ活動への注意喚起のための広域情報を発出した。2月3日のルーブル美術館における襲撃事件、3月18日のパリ・オルリー空港における武器奪取事件に続き、3月22日にはロンドンのウェストミンスター橋と国会議事堂で車両突入によるテロ事件が発生したことを受けたもの。フランスや英国以外でもテロの企図者などが摘発されていることを踏まえて、旅行者などには「欧州ではいつテロ事件が起きてもおかしくないとの認識を持つことが重要」と警告している。
旅行者に対しては、「ここは日本ではない」という意識を持つこと、最新の関連情報の入手に努めること、テロの標的になりやすい観光施設などでは周囲の状況に注意を払い、できるだけ滞在時間を短くすることなどを要望。そのほか3ヶ月以上の滞在については在留届の提出を、3ヶ月未満の場合は「たびレジ」への登録を推奨している。
また、外務省がテロ対策に関するパンフレットを複数制作していることを改めて説明。「海外旅行のテロ・誘拐対策」「海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A」などをインターネット上で公開していることを紹介している。
海外邦人安全協会はこのほど、外務省診療所長の仲本光一氏を講師に招き「海外への赴任・渡航前に注意すべき医療事情と安全対策」と題した講演会を開催した。仲本氏は旅行業界などから参加した企業の危機管理担当者など約60名に対して、赴任前の情報収集や予防接種、現地での体調管理や保険加入などの重要性について説明。終了後の本誌の取材に対しては「多くが短期旅行者にも当てはまる」と述べ、旅行会社などの協力に期待した。
仲本氏は講演で、昨年に世界的な注目を集めたジカ熱など、主な感染症の発生状況について解説。このうち今年に入りマレーシアで日本人が死亡したデング熱については、東南アジアでの流行が「かなり危険な状態にある」と伝え、感染の疑いがある場合は受診など早期の対応が必要と説明した。
ジカ熱やデング熱などと同じく蚊が媒介するマラリアについては「初発症状が出てから5日以内に治療を開始しないと50%が死亡する」と述べ、「帰国後に間違った診断をされると命取りになる」と強調。一昨年に韓国で問題化した中東呼吸器症候群(MERS)についても「忘れ去られているが、中東ではコンスタントに発生している」と伝え、引き続き警戒を怠らないよう注意を促した。
そのほかには旅行者下痢症など、多くの旅行者が罹りやすい疾病への対策についても説明。重症疾患への対策としては海外旅行保険への加入を強く推奨し「掛け金が少ないと搬送先が限定されるが、4000万円あれば日本に搬送してもらえる可能性が出てくる」など具体的なアドバイスを示した。また、世界各国の医療事情をまとめて発信している外務省のウェブサイトについてもアピールし、「是非利用してほしい」と呼びかけた。
外務省の海外邦人援護統計によれば、日本人出国者数が1621万3789人に上った2015年の総援護人数は2万387人。死亡者数は533人で、そのうち傷病による死亡が約8割を占める。
外務省はこのほど、1月19日にマレーシアで日本人がデング熱により死亡する事例が発生したことなどを受けて、注意喚起のための広域情報を発出した。同省は、昨年7月にも新潟県でフィリピンから帰国した女性がデング熱で死亡した事例を受けて注意喚起をおこなったところ。今回の広域情報では「マレーシアやフィリピンに限らず、アジア・大洋州地域をはじめ、世界中の熱帯・亜熱帯地域で広く発生が見られる」と説明し、対象国にはハワイ、台湾、香港、豪州の一部なども含んでいる。
デング熱は蚊が媒介する感染症で、急激な発熱に加えて、発疹、頭痛、骨関節痛などを伴い、患者の一部は重症化して出血熱などを発症する。予防方法は蚊に刺されないようにすることのみ。外務省は流行地域への渡航を予定している人に対し、長袖の着用や虫除け剤の使用に務めることを呼びかけるとともに、体調の異常を感じたり発症した場合には、早期に医療機関などを受診するよう要請している。外務省が注意喚起している対象国は以下の通り。
▽外務省、デング熱に関する注意喚起の対象国・地域・アジアインド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、中国(浙江省、広東省、福建省、広西壮族自治区、雲南省)、香港、台湾、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、東ティモール、フィリピン、ブータン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モルディブ、ラオス
・大洋州豪州(クイーンズランド州)、キリバス、クック諸島、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、パプアニューギニア、バヌアツ、パラオ、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、北マリアナ諸島、ハワイ、ニューカレドニア、仏領ポリネシア
外務省はこのほど、爆弾テロが発生したエジプトとトルコについて注意喚起のためのスポット情報を発出した。エジプトについてはカイロを含む同国各地で爆弾を使用したテロ事件が相次いで発生していることを受けたもの。エジプトでは12月9日に北部のギザ県とカフル・エルシャイク県で警察車両を狙った爆弾により警察官6名と市民1名が死亡し、警察官6名と市民4名が負傷した。また、11日にはカイロ中心部のアッパーシーヤ地区のコプト教教会で爆弾が爆発し、少なくとも25名が死亡、49名が負傷したという。
トルコについては、12月10日夜にイスタンブール新市街の中心地近くに位置するサッカースタジアムと公園で発生した爆弾テロ事件を受けたもの。現地当局によれば、これまでに38名が死亡し155名が負傷した。日本人の被害報告はない。事件に関しては、反政府武装組織のクルド労働者党(PKK)の関連組織であるクルディスタン開放の鷹(TAK)が犯行声明を出しているという。トルコでは2015年7月以降、特にトルコ南東部にある治安機関を狙ったテロ事件が増加しており、アンカラやイスタンブールでは外国人観光客が犠牲となる事件も複数発生している。
外務省はエジプトとトルコへの旅行者に対して、テロに対する注意を強化し最新情報の入手に努めるとともに、テロの標的になりやすい人が多く集まる施設や政府・軍・警察関係施設、宗教関連施設などに近づかないよう呼びかけている。
なお、駐日トルコ共和国大使館は今回のテロ事件に対し、「トルコの結束と存続及び国民の社会心理を標的にした邪悪なテロ攻撃を強く非難する。犠牲になられた国民と遺族に哀悼の意を表し、負傷者の一刻も早い回復を祈っている」とコメントしている。
外務省は9月8日付で、「感染症危険情報」と連動する形でマレーシア全土にレベル1の注意喚起を発出した。同省は、このほどコタキナバルで国内感染によるジカウイルス感染者1名が確認されたことを受けて、4日に注意喚起のためのスポット情報を発出していたところ。その時点では世界保健機関(WHO)などがマレーシアをジカ熱流行国に指定していなかったため、レベル1には指定しなかった。
外務省が現在、ジカ熱に対する注意喚起を実施している国と地域は60以上に上り、東南アジアではインドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピンも全土をレベル1に指定している。日本では海外で感染して帰国後に発症した輸入症例が10例報告されているのみで、そのうち今回の流行における症例は7例。
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